腸内環境で注目すべきもう一つのポイント「消化液」

腸内細菌叢は、食べ物の内容によって大きく影響をうけます。しかし、腸内細菌叢が直接出会うのは食べ物そのものではありません。咀嚼されたうえ、さらに様々な消化液が加わってドロドロになった混合物です。
私たちは食べ物を飲み込んでしまったあとの消化の様子を目で見ることができないので日頃あまり意識しませんが、食物が消化器内に入るたびに、実はかなりの量の消化液が分泌されます。
消化液には唾液のような穏やかな作用しかもたないものもありますが、胃や腸で分泌される強烈な酸やアルカリの成分を含んだものもあります。
食物はこれらと混ざり合うことで、最初口にしたときとは化学的に大きく異なったものへと変化します。やがて腸管にまで送られ、腸内細菌叢と出会うのですが、このとき腸内細菌叢は混合物の成分しだいで大きく変動します。
つまり、腸内環境の改善には、食べ物だけでなく、消化液についても注目する必要があるのです。


消化液の分泌量は、各個人で大きく異なります。食べ物の消化には消化液に含まれる酵素が重要ですが、この量にも個人差があります。食べ物の量に対してほどよい量が分泌されることが望ましいのですが、年齢、性別、精神状態によっても消化液分泌は変動するため、たとえ同じ物を食べても、家族であっても、食べ物が与える影響は人によって異なります。

アトピーをはじめとするアレルギー体質においても、消化液の分泌力に問題があるのでは、と考える専門家は多くいて、消化液や酵素が少ないことが体質形成に繋がっているのではないか、と推測されています。消化液や消化酵素の不足が続くと、栄養の吸収力が低下した状態が続くことになり、食事量に見合った栄養吸収ができないことになります。これが長引けば健康や免疫のバランスにも当然影響してきます。

消化液の分泌力は、すなわちそれらを生成する内臓の働きに比例します。内臓がよく働くことが、消化液を十分に分泌させるために必要なことなのですが、この内臓が働くためには、やはり食べ物から得る栄養分が必要になります。なんだか本末転倒な話になってしまいそうですが、実際、腸内環境の悪化の根本原因として、食べ物選びよりもむしろ、内臓の働きの低下が先にある場合もけして少なくありません。ですから、腸内細菌叢と内臓の働き、両方をきちんとケアできる栄養摂取をすることが腸内環境の改善への近道になると言えるのです。

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