[コラム]海外ではアトピーにおけるカンジダ対策は常識

アレルギー症状において腸内環境が重要視される一方、「カンジダ」という菌自体も非常に注目されています。

実は、海外ではカンジダの害は古くから知られ、口角炎や食道炎、女性の膣炎など多くの症状に関わることが分かっていて、食事による対処法やサプリメントなどがいくつもあります。

アトピー性皮膚炎に関わっているとの推測も以前からされていて、食事やサプリメントなどでカンジダ対策をすると、症状が軽減する場合があることも分かっていました。

 

医療現場では、症状の原因にカンジダが関わっていると疑われる時、患部の細胞を採取・培養します。カンジダは体のどの部分でも発見されるので、仮に患部で発見されても、それが原因となっているかどうかは分からないのです。

 

カンジダは二形型の菌で、周囲の状況などに応じて2つのパターンの姿を持ちます。人間の体内から採取されたカンジダは、病原性を発揮していない時は酵母型といって丸い形をしていますが、炎症箇所などから採取されるカンジダは菌糸型といって、糸のような菌糸を延ばしています。

 

 左:酵母型 右:菌糸型


培養の結果、酵母型であれば通常問題はなく、菌糸型であることが確認された場合に、病原性があると判断されます。悪玉菌として
人体を侵す時、カンジダはこの菌糸を延ばし組織を傷つけているのです。

 

腸内細菌叢が薄くなった腸内で悪玉化したカンジダが繁殖する時も、菌糸によって腸管壁を傷つけています。腸管内では炎症が起きやすく本来の機能が弱まり、酵素の働きも小さくなって食べ物の消化にも影響が出るようになります。充分な消化ができなければ、食べ物は栄養にはなりません。つまり、腸内のカンジダ繁殖は栄養摂取にも影響してくるのです。

 

さらに悪いのは、充分に消化されなかった食べ物のタンパク質が、傷ついた腸管から漏れ出てしまうことです。私たちが持つ免疫システムは、体内で体の細胞以外の異物を見分ける時、主にタンパク質を指標としています。体の細胞とは異なるタンパク質は異物として排除対象になりますから、当然、漏れ出た未消化物に対して免疫反応が起き、アレルギー症状に繋がります。こうして起きるアレルギー症状には、少しずつ静かに進行し様々な不調に繋がっていくものがあるとされ、現在、非常に注目されています。

 

近年、欧米では、このような漏れやすい腸のことを「リーキーガット」と呼び、これによって起きる様々な症状をまとめて「リーキーガット症候群」と呼んだりしています。

アトピー性皮膚炎の慢性化にも、リーキーガットによるものがあると考えられていて、日本でもアトピー性皮膚炎の背景にカンジダの存在があると考える医師は増えています。

 

さて、この厄介な菌カンジダには、実は抗真菌薬という薬が有効で、殺菌が可能です。

しかし体内のカンジダ殺菌のために内服する場合は医師の管理のもと慎重に用いられます。そのため、症状がよほど重症で、かつ原因が明らかにカンジダなどの真菌であると分かっている場合以外は、安易に抗真菌薬は使われないことがほとんどです。

 

カンジダは、近年の研究でガンの発症にも関わっているともされていてありふれた存在とはいえ見過ごして良い菌ではなくなりつつあります。将来、このカンジダだけを選択的に殺す薬が開発されれば良いですが、現段階ではカンジダ対策を積極的に行う海外でも、普段の食生活での食材選びや食事による菌対策が重要視されています。

腸からのアレルギー対策を行う際も、腸内細菌叢の形成だけでなく、「カンジダのようなアレルギー症状の原因となる菌への対策も視野に入れたものにすれば、効果を出しやすい」と考えられます。

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