第4章 5:ダイナミックに「食べる」生物=多細胞動物の出現と進化

第4章 「食べる」の進化
5:ダイナミックに「食べる」生物=動物の出現と進化(1409)
そもそも生物は、海中に漂う成分を栄養としていたため、これを「食べる」とすれば、食べるは生命誕生と同時に発生したことになります。しかし、彼らの「食べる」は、私たちの「食べる」とはあまりにかけ離れています。海中に漂う栄養分では、そこから取り出せるエネルギー量は細胞単体としては充分かもしれませんが、多くの細胞からなる私たちの体を維持するにはあまりに少なすぎます。
では、私たちのような大きな体をもつ動物は、どうやって生まれたのでしょう。
そこには、やはり、地球環境を劇的に変えた光合成の発生が大きく関わっていました。
光合成能をもつ生物の出現によって、大量に放出された酸素によって、地球環境も生物の勢力分布も大きく変動したことは、前述しました。
無機物と太陽エネルギーから、有機物を作り出すことができる生物の誕生は、地球生命の新たな時代の幕開けをもたらした一大事でした。
酸素に溢れた世界では、それまで隆盛をきわめていた細胞は生存エリアを酸素の及ばない環境へと限定されてしまい、かわってミトコンドリアを住まわせ、酸素呼吸を獲得した細胞が数を増し、その場を占めるようになります。
しかし、酸素呼吸を獲得した細胞のうち、皆が皆、光合成能を獲得したわけではありませんでした。
自分でエネルギー源を作れない生物は、作れる生物に比べて生存においては不利であると言えます。
しかし、多くの細胞で溢れていたであろう太古の海では、光合成能をもつ生物の大繁殖によって、有機物も大量に漂っていた、と考えられます。
すると、光合成ができなくても、栄養の供給には事欠かなかったかもしれません。
しかし、そうはいっても、光合成能を持たない生物は、効率的に栄養を獲得しなければなりません。
栄養を作り出せないハンデを、動き回ることで、回避する必要があったのです。
しかし、動く能力は、光合成能をもつ細胞においても生存に有利に働きます。
酸素呼吸を可能にし、多くのエネルギー産生を獲得した細胞たちは、光合成能があってもなくても、様々な突然変異を機に、それぞれに適した姿へと、様々な形や機構を獲得していきました。
このような変化が繰り返されるうち、やがて細胞内はしきりが曖昧だった核様体は核膜で仕切られ、細胞小器官はそれぞれの機能を発達させ、真核細胞となりました。また、細胞小器官を繊毛や鞭毛に発達させたものも現れ、格段に運動能力を得たものも表れてきました。
光合成能をもちながら、動く能力をもつものも表れましたし、光合成能がないまま、動くものも表れました。動き方も様々で、細かい繊毛をさわさわと動かしながら移動するもの、体をねじりながらドリルのように移動するもの、ムチのような1本のシッポを使って素早く移動するものなどなど。。
このうち、この1本のシッポ、鞭毛をもつ細胞こそが、動物細胞の起源の姿ではないか、と考えられています。
この細胞が当初から光合成能をもっていなかったか、それとも持っていたが手放したのかは不明です。
現在、最も古い動物細胞として考えられているのが、襟鞭毛虫とよばれる単細胞生物です。
光合成能はありませんが、長い鞭毛をもち、これを運動させ、泳ぐように移動します。そして、襟を立てたような構造をもち、ここに入った栄養分を糧としています。
さらに、鞭毛の獲得だけではなく、光合成によって作られる糖と酸素を使った代謝は大きなエネルギー量を得ることができた、ということも動物細胞が発展する要因となりました。
発生後、動物細胞も、植物細胞の発展に追随して、発展していきます。
これとよく似た細胞が集まった構造をしているのが、カイメンです。
カイメンは、単細胞生物の集まったものですが、多細胞生物への進化の過程を考える上で、注目される生物です。カイメンは壷のような形をしていますが、その構造体をなす一つ一つの細胞は襟鞭毛虫のような形をしています。壷のような形の構造体の中に引き込まれた海水中の栄養分をこの細胞たちが得て利用しているのです。
やがて、動物細胞で構成される多細胞生物が成立すると、腔腸生物が発生し、より多くの栄養を獲得することが可能になりました。
こうして各種の動物へと進化していきます。
やがて、この中から、背骨や神経の原形となるものをもつ脊索動物が生まれ、さらに脊頭生物と呼ばれるナメクジウオのような生物も表れます。
ナメクジウオは、栄養を取り込む口のような器官がありますが、これにはまだ顎がなく、無顎生物とも呼ばれますが、これがやがて口へと変わっていった、と推測されています。
しかし、ナメクジウオのような形の化石は、古生代とされる中国の化石群に見られ、このころすでに、現在の魚に繋がる生物が生まれていた、とすれば、古生代のうちにすべての生物の門が揃ってうたことになります。
進化にともない、魚は、海の中で最も大型で強力な生物へと変わって行きます。
その過程で、背骨や神経、筋肉、脳だけでなく、顎や歯、腸などの進化させていきます。
魚類の体内構造を見ると、原始的ではありますが、私たち人間にも見られる多くの臓器がすでに存在しています。
やがて、海を出て、陸上へと進出していくに従い、肺を獲得し、爬虫類になると、エラは退化させてしまいます。陸上に棲むようになって食べ物が硬くなると、歯の発達は目覚ましいものになります。
獲物を掴んでおくだけのものではなく、噛みちぎる、引き裂くことが出来るようになり、鋭い歯を持つようになります。
ほ乳類に発展しても、基本的には肉食で、鋭い歯を使った食性でした。さらにほ乳類は、丸呑みではなく、咀嚼もするようになりました。
陸上にあがったほ乳類は、基本的に肉食でしたが、やがて、獲物を獲得するより、側にある植物で栄養を賄うものが表れます。草食動物です。かれらは、消化が難しい植物から効率よく栄養素を取り出すために、歯と腸を独特なものに変え、生きる道を模索しました。

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