第4章 6:人間の「食べる」 〜大脳・知恵の発達

第4章 「食べる」の進化
6:人間の「食べる」 〜大脳・知恵の発達(1501)
大型の爬虫類が繁栄した時代に、細々と存続していたほ乳類でしたが、それなりに進化もしていました。
乾燥した環境でも子を生み、育てるしくみを発展させ、また、恐竜ほど極端な巨大化はしなかったものの、大型化するものも現れ、恐竜の子供なら捕獲して食べていたであろうと考えられています。
やがて、巨大隕石の衝突によっておきた急激な寒冷化によって、恐竜が衰退すると、ほ乳類は一気に数を増していきます。
恐竜の勢力が弱まった地上で、その場に入れ替わったのは、体温を保持する体内機構をもち、寒冷期でも活動を続けられたほ乳類でした。
ほ乳類の繁栄は、白亜紀後期ころから始まり、それぞれに生息する場や環境に応じて、多くの種に分化していきました。現在生息する多くのほ乳類は、このころ出現したほ乳類のグループ「有胎盤下綱」に属します。
我々人類が属する霊長類もこの有胎盤下綱に属し、6500万年ほど前に出現した、と考えられています。(詳しくは1402を参照)
霊長類は、その生活の場を樹上とし、その場に合った体や食性へと変化していきます。
そして、霊長類の中から、多くのサルが分化していきました。
天敵のいない森の樹上で、サルは繁栄していきました。
腰掛ける姿勢が多かったサル類は、脳を大きくしていきます。その過程では、器用に使える手指を発達させ、枝や石などを道具として使う知恵も持つようになりました。さらに、仲間や家族を大切にする情動行動も持つようになっていきます。
サルの楽園となった森は、多くのサルが生息することになり、また中には体の大きなものも現れるようになってきました。すると、数が増えたことによって、エサの取り合いも増えはじめていた樹上の生活から、ときどき地上におりる者もあらわれるようになりました。
そのころ、気候変動から、乾燥地帯が増え、地上には草原が増えていきました。
地上での適応力をすこしずつ持ち始めていたものは、やがて窮屈になった森を出て、やがては、樹上から完全に地上へと生活の場を変えるものが出てきました。
そのなかから、人類は誕生しました。
地上の生活は、二足歩行の生活へと体を進化させました。平原におりた人間は、狩りや採集をしながら、食糧や気候の変動にともなって移動を繰り返し、地球全土に広がって行きました。
人類が、地球の各地に渡ったころから、地球は氷河期だったのが温暖化しはじめ、海面は上昇し、陸続きだったところで低いところは海に沈み、人の往来がすこし狭められました。
そのころ、狩猟採集の生活から、すこしずつ農耕、畜産の知恵や技術を獲得しはじめ、岩穴などに定住するものがあらわれていた人類は、安定した食糧を獲得したコロニーほど拡大していくようになります。
やがて穀類や芋類など、その土地で確保しやすい食物を主食とするようになっていきます。
脳が大きくなった人類にとって糖類は重要だったのです。
こうして各地に定住するようになった人類はその土地に特化した種族や民族となって、その土地の食文化を作り上げていくことになります。
↓(2007)
生物誕生から、人類誕生までの道筋をたどると、およそ、人間という動物になるまで、どんなものを食べて来たかがわかりますね。
猿人、原人、新人と進化してきた人類ですが、基本的には他の霊長類の動物(サル類)と、かわらない部分を持っています。
そもそも肉食であるほ乳類のうち、樹上を住処と決めた霊長類は、昆虫などの小さな動物を食べていた、と考えられています。
今でも、原猿類という古い猿のグループには昆虫を食べるものが多くいます。
また、このころには植物界にも被子植物への進化も進んでいた、と考えられ、木になる実や種子も食べていた、と考えられています。
動物のなかで、ビタミンCを体内で合成できないのは、数種の動物以外はすべて霊長類で、もちろん人間も含まれます。
樹上での植物摂取ではビタミンCが豊富で、体内で合成しなくても不足はおきなかったため、しだいにビタミンCの合成能力が退化していったのではないか、と考えられています。
こうして、肉食と、植物食のいずれも食性として獲得していきながら、また不要なものは退化させるなどして、自分の棲む場所に適合した食性へと進化と分化をすすめていった、と考えられています。
やがて森を抜け、地上で二足歩行をする生物として進化していき、現在の私たち、ホモ・サピエンスおなるわけですが、現在の人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)登場以降、人類の進化は止まっています。
これは、脳が大きくなり、環境適応力が知恵によって補われるため、姿形を変えなくて済んだから、という説もあります。
脳が大きくなった人類は、他のサルに比べて、格段に糖類を多く摂取する必要がありました。
同じ部分がある一方、人類が独自のもっている食性もあるのです。
さらに、他のサル類よりも体が大きくなった分、タンパク質、脂質も、多く必要です。
このため、ヒトにとって動物性の蛋白質、脂質も貴重であり、狩猟をして、これらの栄養素を賄っていました。

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