ストレスにさらされる現代人

現代人には肉体的ストレスよりも精神的ストレスがのしかかる
 多くの人が目標や問題に向かって取り組み、努力や経験を重ねて喜びや達成感を得られる現代社会は、一方で膨大な仕事量とタイトな時間管理のなか、大変なストレスを抱えながらの日々になることもしばしばです。ストレスが重くなったり、長期に渡るとやがて病気の原因になるため、こまめなケアをしながら健康を維持することが、忙しい毎日を生き抜くためには大切です。
 ところで、ストレスには肉体的なものと精神的なものがあり、現代生活では精神的ストレスの比率が高くなる傾向があります。近年、脳科学の進歩とともに、この精神的なストレスが及ぼすさまざまな悪影響のメカニズムが明らかになってきています。

精神的ストレスで体の防御体制は過剰になり、やがて疲弊する
 ストレスは脳の「大脳皮質」で刺激として感知され発生します。すると、その刺激のタイプに応じた神経伝達物質が分泌され、体の各部にホルモンや神経を介して、体をストレスに対抗させるための準備が行われます。
 まず、自律神経のうちの交感神経が優位になり、体が戦闘モードに切り替わります。さらにホルモン分泌においては、体の代謝活性を上げる「コルチゾール」というホルモンが分泌され、傷ついた細胞や組織を代謝によって修復する準備に入ります。こうして、ストレスを感知した脳によって、体は来たるべき敵と会いまみえる準備を行い、備えるのです。
 ところが、精神的ストレスというのは、目に見える敵ではありません。また、たとえ過ぎ去ったとしても、果たして本当にそれが終わったのかどうか脳が判断する材料が乏しいこともあります。すると、そもそも脳というのは、危険を察知するための器官ですから、終わりがはっきりしない脅威に対して、ずっと危険を感じ続けやすい、という特性があるのです。脳はストレスに対して敏感な状態でいつづけることになり、神経系やホルモン分泌器官に対する指令は出続けることになります。
 元来、生物の体は、緊張と弛緩、つまり活動と休息のリズムを刻みながら、生体活動を行うようにプログラムされています。防御体制の維持が続くということは、体の緊張モードが続き、休息が訪れないことになり、指令を受け続ける神経や副腎はやがて疲弊していきます。

常に炎症が起きやすい免疫バランスに
 神経系と内分泌系は免疫とも密接にリンクしています。交感神経優位状態の継続は自律神経バランスの偏りを、副腎の疲労は内分泌系の働きの低下を招き、免疫バランスもそれと連動して変化して、体内のさまざまな部分での炎症を起こしやすくなります。炎症というのは、そもそも体内に侵入してきた外敵を攻撃したり、損傷個所を排除するための反応ですが、神経系や内分泌系が疲弊した状態の免疫バランスでは、ちょっとした刺激に過剰に反応したり、ときには健康な自分の細胞まで攻撃排除対象としてしまいやすくなります。現代社会に生きる私たちが様々なアレルギーにかかりやすかったり、季節の変わり目などに体調を崩しやすいのは、この炎症をおこしやすい免疫バランスによるところが大きいのではないかと考えられています。

資料
・脳のストレス感知と神経系、内分泌系への伝達経路

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