現代人の消化器官が危ない

ストレスがかかると腸にも炎症が起きる
 脳による体の各部への連絡経路やそのしくみに関する研究が近年進んでいますが、そのなかで特に注目されているのが、脳と腸の関係性です。まだ未解明の部分も多く残されていますが、脳と腸が密接に関わり合い、脳から腸へ、また腸から脳へと様々な情報や指令が伝達され、互いにコントロールしあっていることが分かってきています。
 さて、私たちは経験的に、非常に重いストレスや長い緊張状態に置かれると胃や腸など内臓にも影響があることを知っています。脳と腸の関係性の研究からも、ストレスが内臓に変調をもたらす具体的なメカニズムが明らかになってきています。脳がストレスを感じると、神経系や内分泌系に影響が出ることは説明しましたが、胃や腸にも神経を介して刺激が与えられ、炎症が起きることが分かってきたのです。

腸の炎症は怪我をしている状態と同じ
 胃や腸などの消化器系に炎症が起きるとどんなことが起きるのでしょうか。私たちの口から肛門までに至る消化管は食べ物の通り道で簡単に言えばチューブ状の管であると言えます。それが、進化の過程で獲得してきた食べ方や食べ物に応じて、様々な部署ごとに形状や働きをもつようになり、最終的に現在のような、胃や腸へと変化してきました。消化器系器官の内側表面は外から入ってきた食物に直接触れる場所であり、消化や吸収、また食物に紛れて外部から入ってきた侵入物を見つけ出すための検閲の役目も担っています。ストレスがかかると、この表面組織に炎症がおき、本来持っている機能を十分に果たせないようになってしまいます。いわば、私たちが皮膚に怪我をしたときと同じ状態となり、傷口からの外来物侵入の危機が発生するのと同じように、食物に紛れ込んでいる侵入物が入ってくる危険性が増すことになるのです。

消化器系のバリア機能
 とはいえ、私たちの消化器系は少々の傷があってもそこから内部への侵入を簡単にはゆるさないしくみも備えています。それは消化器系の内側表面を覆うように形成される粘膜バリアによります。私たちの消化器系器官すべては基本的に表面が柔らかい組織ですが、むき出しに組織の細胞が表れているのではなく、細胞から分泌された粘液で覆われています。この粘液は消化器系の各部署によってその厚みや成分が多少異なりますが、この粘液が粘膜バリアとなって消化器官内部表面を覆うことで仮に組織が傷ついても直ちに外来物侵入の危機に繋がらないよう機能しているのです。

消化器系バリア機能が破綻する原因
 消化器系バリアは消化器系器官の細胞が健康で粘液を十分分泌することで形成されます。したがって、少々のストレスならいいのですがあまり強いストレスで広範囲の細胞が機能できなくなるほどの状態になればバリアの形成が不十分になります。ストレスが大敵であることは間違いありません。
しかし、現代人はストレス以外にもう一つ消化器バリア形成に支障を出しやすい要因を持っています。
それは、日ごろ摂っている食物にあります。

資料
ストレスで腸に炎症が起こるしくみについて

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