[2]「脱顆粒」による炎症物質拡散を抑える
2:脱顆粒で放出されるのは顆粒だけじゃない。脂質メディエーター対策
顆粒を蓄えた細胞が脱顆粒をしなければならないような刺激や情報をうけたとき、その細胞膜からは脂質系の炎症物質も放出されます。ロイコトリエン、プロスタグランディンE2などといった、いわゆる「脂質メディエーター」とよばれるもので炎症を拡大させます。顆粒に含まれる炎症物質とは別の物質で生成過程も異なりますが、同じタイミングで放出されやすく、相乗効果で炎症を悪化させます。
ところで、ひとくちに脂質メディエーターといっても、実は炎症性のものと抗炎症性のものとがあり、かならずしも炎症を悪化させるものばかりではありません。脱顆粒時に細胞膜から生成される炎症性脂質メディエーターの原料は細胞膜を構成する脂質であり、その脂質が豊富にあれば、その分、炎症性脂質メディエーターも増えることになり、炎症作用も拡大します。細胞膜を構成している脂質は、もともと食事で得た栄養分に由来する分も多いですから、脂質メディエーターの質や量は食生活と相関していることになります。近年のアレルギー罹患率の増加には、炎症性の脂質メディエーターの過剰生成も一因となっていると考えられていて、その根源に揚げ物や飽和脂肪酸の多い食生活があると多くの医師や研究者が考えるようになっています。食生活のなかに使われている油脂はとかく見えにくい存在ですが、その種類にまで留意した食材選びが健康を考えるうえで重要であると考えられるようになってきているのです。
炎症性メディエーターを減らす[EPA][一部のカロテノイド]
炎症性脂質メディエータを生み出す脂質としては「アラキドン酸」という脂肪酸があります。体内でアラキドン酸に変換されやすい脂質を食事で摂っていると、体を構成する細胞の細胞膜にアラキドン酸が入りやすくなり、炎症性脂質メディエーターであるプロスタグランディンE2やロイコトリエンが生成されやすくなります。しかし、同じく脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)があると、この脂肪酸も細胞膜の構成成分となるので、いわば椅子とり合戦のような感じで競合することにより、アラキドン酸が細胞膜の構成成分になることを減らせるのです。EPAは魚やナッツ類に多く含まれています。
さらに、アスタキサンチンやフコキサンチン、ベータカロテンなどの一部のカロテノイドにもロイコトリエンの生成を抑える働きが確認されています。これらのカロテノイドは脱顆粒作用もあるという研究もあり、注目されています。カロテノイドは、脂溶性の色素成分で強い抗酸化作用もあります。
さらに、アスタキサンチンやフコキサンチン、ベータカロテンなどの一部のカロテノイドにもロイコトリエンの生成を抑える働きが確認されています。これらのカロテノイドは脱顆粒作用もあるという研究もあり、注目されています。カロテノイドは、脂溶性の色素成分で強い抗酸化作用もあります。
【よりみち】
すでに放出されてしまった炎症物質の作用を抑えることはできるか
すでに放出されてしまった炎症物質の作用を抑えることはできるか
・血中ヒスタミンを排出、細胞への吸着を防ぐ物質はあるか
・血中TNFαの排出、細胞への吸着を防ぐ物質はあるか
さきほど上げた代表的な炎症物質については、実はそれぞれの半減期、つまり、放出されてから作用するまでの有効期間がだいたい計測されています。たとえば、ヒスタミンは放出されてから数分、TNFαも20分程度と比較的短い時間であることが分かっています。放出されてからいつまでもただよってあちこちの細胞にとりついて悪さをすると思ったのですが、そうでもないようで、放出されたあと比較的すぐに分解されてしまうようです。とはいえ、免疫細胞の脱顆粒がつぎつぎ起きているとすれば、炎症物質そのものに対する対処も必要だと考えたほうがいいでしょう。ここでまずご紹介するのはヒスタミンを直接分解するともいわれている「ビタミンC」です。アトピー性皮膚炎の人はビタミンCを1日10000mgほど摂取するとよいとする説があります。