アレルギーの歴史

今でこそ、日本のアレルギー罹患率は高い数値にありますが、かつてはそれほど多い症例ではありませんでした。しかし、海外の文献では、アレルギーに相当すると思われる症状の記録がいくつか確認されており、かなり昔の時代からアレルギー症状が存在していたことがわかっています。人類史上、最も古いと思われるアレルギー反応の記録としては、紀元前27世紀にエジプトのメネス王が蜂に刺されたことによるアナフィラキシーショックで死亡した、という古代エジプト象形文書が挙げられます。では、アレルギーの歴史について、簡単にご紹介しましょう。
おそらく、アレルギー反応は人類の歴史上、皆無だった時代はないと考えられます。いつの時代も、どこかで誰かが何らかのアレルギー症状を煩っていた、と考えられますが、そのしくみは謎とされていました。
それを大きく動かすきっかけとなったのが、感染症の大流行です。中でも、1796年、牛痘をヒトに接種することによって天然痘を予防する、という思い切った手段が成功したことが、以降の医学を大きく変えることになります。このジェンナーの功績は、「予防接種」という方法を開発しただけでなく、生物の体に備わる「免疫」というしくみについても医学の新たな扉を開くことになったのです。
他者の体の一部を移植すると、実は個体によっては様々な反応の違いがあります。予防接種が開発されて以降、この反応の違いについて多くの科学者が解明に挑みました。また、同じころ細菌学も発展し、1800年代は、多くの病原菌や、それによる病気発症のしくみについても様々な発見がされ、破傷風菌の研究をしていた北里柴三郎は「抗毒素」、すなわち、今で言う「抗体」を発見するなどして、大きな功績を残しました。
1900年代に入って間もなく、1906年、クレメンス・フォン・ピルケー(Clemens von Pirquet)が、アナフィラキシーなど、いくつかの免疫の反応を説明するものとして、「アレルギー」という言葉や概念を提唱します。当時の説明は、現在使用されている「アレルギー」とは少し意味合いが異なりますが、これ以降、この言葉は免疫のしくみを語る上で、なくてはならない言葉として定着することになります。その後、1920年には「アトピー」という言葉も登場します。1900年代は多くのワクチンが開発された年代でもあり、それまで恐れられていた感染症の予防医療が大きく前進した時代でもあります。同時に免疫学においても、様々な研究や発見がなされ、それに伴い「アレルギー」や「アナフィラキシー」といった言葉も、意味や定義、分類の変更などを経ながら、現在でも頻用される医学用語となっていきます。
参考:
厚生労働省:平成22年度リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキストP5-P14「第1章 アレルギー総論」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf
Wikipedia:医学と医療の年表(https://ja.wikipedia.org/wiki/医学と医療の年表
改訂:2016.04.25

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