消化器官内バリアの機能
消化器内バリア形成に支障が出るような食物について取り上げる前に、消化器内バリアの機能についてもう少しご説明しましょう。消化器内の表面に形成される粘膜バリアは組織細胞と外界から取り込んだ食物との間の緩衝材のような働きをすることがまず第一の機能です。
さらに、消化器官内には食物を溶かすための消化酵素がところどころで分泌され、消化器の蠕動運動が加わって細かい分子にまで分解されていきます。この消化酵素にはいくつかの種類がありますが、なかには非常に強力な酸やアルカリを含んだものがあり、これらから消化器官を守るためにも粘膜バリアは機能しています。食物の消化を司る胃や腸では消化酵素が大量に分泌されますから、粘膜バリアの働きは非常に重要になっています。
さらに、腸では食物の消化だけでなく栄養素の選択的な吸収と、そこに棲みつく細菌の働きによるビタミン生成なども行われています。この細菌を棲みつかせているのも粘膜バリアがあるからこそで、粘膜バリアが無ければ良い腸内細菌は住み着きにくく、またいわゆる日和見菌といった菌は悪玉化しやすくなってしまいます。消化器官の粘膜バリアは、緩衝材であり、保護膜であり、有用な腸内細菌の培地でもあるというわけです。
細胞を弱らせる偏った栄養摂取
現代人の消化器内の粘膜バリアが薄くなっている原因にストレスが挙げられますが、現代生活に流通する食物によるところも大きいと考えられています。というのも、流通が行き届き、何でも便利になったようでも、私たちはとかく食物を好みだけで選んでしまいやすく、とかく甘いものを中心とした炭水化物や脂質中心になってしまっています。摂取している栄養素の偏りもまた、細胞の働きを弱らせ、粘液の分泌が減ってしまう一因になっていると考えられています。
悪玉化した腸内細菌の脅威
もう一つは甘いもの中心の食物はただでさえ少ない粘膜バリアに済む細菌を悪玉化させやすい、ということがあります。悪玉化した細菌は消化吸収機能を妨げるうえに、さらに腸内細胞を傷つけるということまでしてしまうものがあります。これらによっても腸内組織は傷つけられてしまうのです。
ストレスに加えて、この腸内環境の悪化があると腸はまさにボロボロといった状態です。栄養素を分子によって選択的に透過させ、安全に取り込むはずの腸は穴だらけ状態となり、栄養にできないような大きな分子が腸壁を通過して血中へ、そして全身へと回ってしまうことになります。
血中に入ったおきな分子は免疫にとっては外来物と同じ扱いになり、直ちに対処しなければならないものです。これを排除しようとさまざまな免疫機能を発動します。
また、腸には重要な免疫器官が存在し、腸内が荒れることで免疫の機能を直接狂わせてしまうこともおきてしまいます。ストレスでただでさえ、免疫バランスが炎症過多になりやすい現代人にはまさに決定的な打撃となってしまいます。