腸粘膜を救うグルタミン

腸内環境の悪さが現代人のさまざまな不調の元凶と考えられています。そこで様々な腸によいとされる菌の摂取が進められていますが、棲みつきやすい菌というのは人によって異なり、摂取しても必ずしも定着はしません。よいと言われる腸内細菌をとっても一様に良い結果につながらないのはこのためです。

では、破綻した腸内環境をよくするには何をすればいいのでしょう。
ここにひとつのヒントが医療の現場に見ることができます。

胃腸が傷ついている状態のひとつに、開腹手術後すぐの状態もあげられます。 病気の原因の除去を目的として行われる手術ですが、手術それ自体は消化器を傷つける行為そのものでもあります。手術後すぐは感染症の危険性があるため、食物の摂取が通常難しいことがほとんどです。しかしながら、食物摂取が行われない期間が長引くと消化管の機能低下も起き、腸管内の絨毛が小さくなってしまう、ということが確認されています。絨毛は栄養吸収を行う重要な器官であり、食物からの栄養摂取が不十分になれば、低栄養状態にもなりかねません。また絨毛が小さくなることは腸管内の表面積が減少することでもあり、そこに棲みつく腸内細菌叢もおのずと減少し、これもまた免疫バランスを悪化させ、健康状態の維持に悪影響をもたらす、ということになります。食事はできないけれど、消化管の機能は低下させたくない、というジレンマが開腹手術後の医療現場では起きることになるのです。

近年、このような場合に、医療現場では消化管の栄養となるグルタミンの投与が行われるようになっています。グルタミンはアミノ酸の一種で、通常の食事でとるたんぱく質から体内合成できる成分です。しかし、その幅広い機能が近年明らかになってきており、また、私たちの生体内での変動をみると非常に枯渇しやすい成分であることがわかってきました。体内で合成されるために必須栄養素には数えられませんが、グルタミンの枯渇が様々な症状に直結することが分かってきたのです。

まず、グルタミンは消化管の細胞の栄養源になります。グルタミンを与えることで消化管の細胞の活動がうながされ、粘膜バリアの形成がすすみ、よい腸内細菌が棲みつきやすくなります。また小腸の絨毛を育てなおすことで小腸内の表面積が広がり、腸内細菌叢自体が量的に拡大できるのです。

近年、グルタミンの投与は、開腹手術後の患者だけでなく、腸内環境が破綻していることによって症状を発症している人にも効果があることが発表されています。グルタミンの投与で消化管細胞の活動が復活し、粘膜バリアが十分な量分泌され、小腸絨毛が再建されることで、腸内免疫器官の機能が正常化し、また腸内細菌層の量とバランスが整えられるからだ、と考えられています。

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