腸内細菌叢の薄さがアレルギーを招く

腸内細菌叢の薄さがアレルギーを招く 

近年行われたある調査の中に〝アレルギーを持つ人の腸内では細菌叢を構成する細菌数がアレルギーのない人に比べて少なかった〟というものがあります。また、アレルギーを持つ人の便はそうでない人に比べて少ない傾向があることから〝腸内細菌叢そのものが量的に少ない状態にある〟ともされています。〝バランスだけでなく質的、量的に充分でないこともアレルギーを招く要因になっている〟と考えられています。 
細菌叢の豊かさとアレルギーの発症に関係があることは、このような調査以前からも推測されていました。その推測の元となっていたものが「抗生物質の使用後にアレルギー症状が悪化する」という報告の多さです。 

抗生物質は感染症の原因となっている菌を殺すために用いられますが、一緒に常在菌の一部も殺してしまうことがあり、服用後に全身の細菌叢バランスに影響が出る場合があります。 

特に悪いのが善玉菌が死んでしまい悪玉菌が残った場合で、それまで善玉菌によって勢力を抑えられていた悪玉菌が一気に勢力を拡大させます。細菌叢の様相は一変し、抗生物質によって感染症の原因であった菌は死んでも、本来の常在菌バランスが崩れたことによって新たな症状の発症に繋がってしまいます。 

このため抗生物質の服用の際には、善玉菌を増やす薬も一緒に処方されることが多くなってきました。細菌叢の状態と免疫がどのように関わっているのか具体的なメカニズムには多くの謎が残ったままですが、このような対処が必要であることは広く認識されるようになってきたのです。 

ところで腸内細菌叢の悪化は、何も抗生物質だけでもたらされるものではありません。現代人の多くが腸内環境に何らかの問題を抱えているともいわれていますが、抗生物質を飲んでいる人ばかりではありません。 

では何が原因かといいますと、様々な研究や統計から現在〝原因の多くは生活習慣の中に潜んでいて特に食べ物が大きく関係している〟と考えられています。 

健康と食習慣に相関関係があることは多くの人が経験的に知っていることです。近年ではさらに科学的な分析を加えて、よりよい食べ方や食べ物を多くの国や企業が研究していますが、その結果から導かれる1つの答えがあります。それは各人種や民族が長く暮らしてきた風土で培ってきた食生活こそが、最も効率的な栄養摂取につながっていることが多いということです。日本で行われた研究でも、日本人の長い腸で豊かな腸内細菌叢を形成するのに日本の食材が効果的であることが分かっています。 

しかし、現代社会では生活が多様化し、食事のスタイルもは変化して、必ずしも日本人だからといって日本食を食べてはいません。食材の種類についても昔と比べてかなり増え、加工済み食品など手軽に食べられるものが選ばれやすくなっています。本来、日本人が多く食べてきた野菜や、手間のかかるもの、例えば乾物などを、なかなか食べなくなってきているのです。 

野菜や、乾物によく利用される豆類、海藻類などは食物繊維が豊富で、このような繊維の豊富な食材を食べてきたことが日本人の腸を長くした、と考えられています。長くなった分、多くの腸内細菌を棲まわせなければなりませんが、繊維の多い食材がそれを助け、日本人の免疫系を培ってきました。 

しかし、戦後に一気に進んだ食生活の変化で繊維の多い食材が減り、その変化とともにアレルギー罹患率も増加しました。食と免疫が密接に関わっていることを誰もが感じるようになり、日本人と日本食の関係が改めて見直されるようになってきています。 

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