第4章 2:細胞の基本成分は全生物でほぼ同じ

第4章 「食べる」の進化
2:細胞の基本成分は全生物でほぼ同じ(1403)
生物であることの根幹は体が細胞で出来ていることです。多種多様に見えるどの生物たちも、よくよく見れば、小さな細胞の集合体であることに他なりません。そして、この細胞ひとつひとつの基本的な構造、成分、細胞内の働きにおいても、実はどの生物もほぼ同じであることがわかっています。
姿も生態もぜんぜん違うのに、こんなことがあるのでしょうか?
まず、細胞の構造から観察してみることにしましょう。
細胞は細胞膜という膜のなかに、細胞基質と細胞内小器官が入っている、というかたちをしています。
(各生物の体内で分化した細胞にはこの範囲にないものもあります 例:赤血球)
細胞内小器官には、細胞の働きや設計図などの情報をもつ核、酸素をつかってエネルギーを生み出すミトコンドリア、などがあります。これらは、細胞が生きるための働きを分業して行うところで、細胞内で連携して働きます。細胞基質は、細胞内を満たすものですが、小器官同士の連携を助けたり、細胞内の反応を促したりする働きがあったりします。
この基本構造は、真核生物の発生後、すべての生物で共通です。
次に成分について見てみましょう。
細胞を構成する細胞基質、細胞小器官はいずれも、おもにタンパク質でできています。
これらは細胞という形を保持し、細胞構造を支える成分でもあるので、構造タンパクと呼んだりもします。
また細胞内や、小器官内では、細胞に取り込まれた水分や、酸素、さまざまな分子をつかって化学反応がおき、これらが連係して、細胞の活動となり、組織の働き、器官の働きとなって、体を維持するしくみを支えています。
細胞内でおきている小さな化学反応も、タンパク質があることによっておきます。細胞内の化学反応をおこすタンパク質を酵素タンパクと呼びます。
細胞の形においても、働きにおいても、タンパク質の存在が主体となっているのがわかりますね。
細胞内、細胞どうしの働きの連係は、ある物質のやりとりがされることで起きています。
その物質とはATP(アデノシン3リン酸)という物質です。
細胞内の小器官はそれぞれ異なる化学反応を起こしています。しかし、その化学反応どうしは、ATPをわたしたり、渡されたりすることで、互いに連携をとることができます。
また、ATPは細胞を出て、細胞どうしでもやりとりされます。
このためATPは「生体内エネルギー通貨」と呼ばれたりもします。
細胞内では、構造と化学反応の主体となるタンパク質とATPが、常に分解されたり、合成されたりしています。
タンパク質、ATPのほかには、リン脂質と核酸という成分も重要です。
細胞膜は、細胞がいきるために必須である水分を閉じ込めるため、おもにリン脂質という脂質が主成分となっています。細胞膜はとても多機能で、必要な水分を閉じ込めるというだけでなく、必要な分子は入れ、不要な分子は出す、という選択もできます。
そのおかげで、細胞は常に新しい成分を取り入れ、細胞内の化学反応に用い、要らなくなったものを出して、働き続けることができるのです。
さらに、細胞内小器官内の情報を格納している核は、核膜という膜の中に核酸という成分を満たしています。
細胞に含まれる核酸は、その物質構造そのものが、アミノ酸を並べて、タンパク質をつくりあげるための情報となります。この情報のおかげで、細胞は、複雑なタンパク質でも間違いなく作りあげることができ、それによって私たちは体を成長させたり、維持することができるのです。
細胞の姿や生体の違いは、作り上げられるタンパク質が生物ごとに異なるためです。
しかし、細胞を構成する成分、タンパク質、ATP、リン脂質、核酸も、どの生物の細胞においても基本成分として働いています。
このことから、生物はすべてひとつの生命体から、その基本条件を受け継いで、今に至るのではないか、と考えられたのです。

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