第5章:人間の「食べる」
1:人間の食性(2007)
生物誕生から、人類誕生までの道筋をたどると、およそ、人間という動物になるまで、どんなものを食べて来たかがわかりますね。
猿人、原人、新人と進化してきた人類ですが、基本的には他の霊長類の動物(サル類)と、かわらない部分を持っています。
そもそも肉食であるほ乳類のうち、樹上を住処と決めた霊長類は、昆虫などの小さな動物を食べていた、と考えられています。
今でも、原猿類という古い猿のグループには昆虫を食べるものが多くいます。
また、このころには植物界にも被子植物への進化も進んでいた、と考えられ、木になる実や種子も食べていた、と考えられています。
動物のなかで、ビタミンCを体内で合成できないのは、数種の動物以外はすべて霊長類で、もちろん人間も含まれます。
樹上での植物摂取ではビタミンCが豊富で、体内で合成しなくても不足はおきなかったため、しだいにビタミンCの合成能力が退化していったのではないか、と考えられています。
こうして、肉食と、植物食のいずれも食性として獲得していきながら、また不要なものは退化させるなどして、自分の棲む場所に適合した食性へと進化と分化をすすめていった、と考えられています。
やがて森を抜け、地上で二足歩行をする生物として進化していき、現在の私たち、ホモ・サピエンスおなるわけですが、現在の人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)登場以降、人類の進化は止まっています。
これは、脳が大きくなり、環境適応力が知恵によって補われるため、姿形を変えなくて済んだから、という説もあります。
脳が大きくなった人類は、他のサルに比べて、格段に糖類を多く摂取する必要がありました。
同じ部分がある一方、人類が独自のもっている食性もあるのです。
さらに、他のサル類よりも体が大きくなった分、タンパク質、脂質も、多く必要です。
このため、ヒトにとって動物性の蛋白質、脂質も貴重であり、狩猟をして、これらの栄養素を賄っていました。
第5章 1:人間の食性
