はじめに

●現代人の多くが「炎症」体質
 多くの人が目標や問題に向かって取り組み、努力や経験を重ねて喜びや達成感を得られる現代社会は、一方で膨大な仕事量と迫る期限によって、大変なストレスを抱えながらの日々になることもしばしばです。ストレスが重く、長期に渡るとやがて病気の原因になるため、こまめなケアをしながら健康を維持することが、忙しい毎日を生き抜くためには大切です。
 ストレスには肉体的なものと精神的なものがあり、現代生活では精神的ストレスの比率が高くなる傾向があります。精神的なストレスは自律神経や免疫のバランスを崩すことが分かっていて、このような状態に陥ると体は痛みやかゆみなどを伴う「炎症」を起こしやすくなります。
炎症を起こしやすい免疫状態は、アレルギーを起こしやすい状態でもあります。代表的なアレルギー症状である花粉症やアトピー性皮膚炎は、鼻粘膜や皮膚で炎症反応が起きている状態ですが、これらのアレルギー患者はいまや国民の2人に1人ともいわれています。現代人の多くが、いつアレルギー症状を発症してもおかしくない状態にあります。
●コツを掴めば自分で免疫バランスを補正できる
免疫バランスの崩れによって発生する炎症は、一時的なケアだけではなかなか良くならず、免疫の状態が改善されないかぎり、しつこく繰り返し表れるようになります。アレルギーで処方される薬の多くも症状の程度を抑えはしますが、免疫バランスにまでは作用しません。免疫バランスは毎日の生活の積み重ねによって形成される部分が大きいため、簡単には変えられないのです。
しかし、そうして形成された免疫バランスは、新たに改善した生活を繰り返していくことで、やがて形成しなおされていきます。時間はかかりますが、免疫の不調から脱するには、この方法が最も近道だといえます。
また、アレルギーに関する多くの研究から、免疫を左右する生活のポイントが発見されています。ポイントになるのは主に「食事」と「睡眠」、そして「活動」に関するものです。これらのとり方を理解し、実行し、そして繰り返していくことで、しだいに免疫のバランスが整っていきます。知識を得てあなたの生活に取り入れるコツを掴めば、生活を大きく変えなくても効率よく免疫に働きかけることができるのです。
●数あるポイントの中で核となる食生活
アレルギーの1つであるアトピー性皮膚炎の改善でも、ポイントは食事・睡眠・活動です。なかでも食事の摂り方は特に大きなポイントになります。本書はアトピー性皮膚炎に関する取材や情報をもとに、健康な肌を目指す上でカギとなる栄養素や食材を取り上げていますが、その前に基本的な栄養バランスの取り方についても解説しています。
実は、この最もベースとなる部分 は、忙しい現代人の多くで崩れていることが多く、炎症を過剰に発生させやすい体質を導く大きな要因となっています。
今回、食生活改善の目安となる基本的な献立の立て方と免疫バランスを整える食材選びについて伝えたいと思い、本書を書かせていただきました。具体的な食材も紹介していますので、はじめは1品でも2品でも可能な範囲で摂り入れ、最終的には目的を持った献立作りまでできるようになれば、食のコントロールはほぼ可能になったといえるでしょう。
「第一章:皮膚に炎症が表れる理由」では、アトピー性皮膚炎の原因探求から見えるさまざまな炎症の原因、アレルギーの仕組みについて解説しています。
「第二章:アレルギー体質の対策」では、腸内環境や分泌系、自律神経と免疫との関わり、近年注目されている真菌の関与について解説しています。
「第三章:基本的な体力・免疫力をつける食生活」では、厚生労働省と農林水産省が示す「食事バランスガイド」を用いて、健康を維持するのに必要な栄養摂取と食生活について解説しています。
「第四章:アトピーにも立ち向かえる! 皮膚に効く14の栄養素」では、腸内環境の改善や分泌系の支援、また、免疫系に直接関わるとして注目されている栄養素と食材について紹介しています。
「第五章:症状を少しでも軽くするコツ」では、生活環境に潜んでいる炎症やアレルギーを誘発する物質への対策について解説しています。
●本書を手に取ってくださった皆様へ
皮膚の症状というのは、比較的 起こりやすく、放っておいても治ってしまうものも多いため、乾燥や小さな皮膚炎程度ならやりすごしてしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、かゆみや赤みが増すようになると「ひょっとしてアトピー?」となってきます。
本書を手にしてくださった方には「基本的には健康肌だけど、ちょっとしたことで乾燥しやすくなったり敏感になる」という方から、現在アトピー性皮膚炎を治療中の方もいらっしゃると思います。中には、アトピーかもと思っていながら、まだ医療機関にかかっていないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
アトピー性皮膚炎は直接命を奪うような疾患ではありませんが、重症化するとQOL(生活の質)に大きく影響します。症状が軽いうちに専門の医療機関にかかるようにしましょう。治療法や使用する薬について疑問などがある場合は、医師に積極的に伝えると安心して治療を受けられます。
また、検査の結果によっては、アレルゲンが判明することもあります。本書で紹介している食材の中にアレルゲンを含む食材があった場合は、かかりつけ医に相談し、摂取しても大丈夫かどうかや、どの程度の量なら摂っていいのかなど確認してください。
良くなったり悪くなったりを繰り返すのがアトピー性皮膚炎の特徴ですが、治療やスキンケアと並行して、普段の栄養摂取をバランスよく行ない、必要に応じてサプリメントで強化すれば重症化を防げます。アトピーと闘いながら忙しい毎日を送っている皆様に、本書が少しでもお役に立てられると幸いです。

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